不妊治療について ~パートナーと一緒に歩む不妊治療~
不妊症とは???
妊活を試み1年以上妊娠しないと不妊症と判断します。
現在は晩婚化が進み、できれば早く妊娠を希望したい方や1年以上も妊娠しない場合でも積極的に不妊原因を検査し治療する事がすすめられています。
30代半ばより妊娠率が少しずつ低下し始め、40代になると顕著に低くなり、さらに流産率も高くなります。
不妊症の原因をして、男性不妊も増加傾向にあり夫婦での検査は必須となります。
「妊娠しないな」と思ったら、気軽に早くパートナーとの受診をおすすめします。
2022年4月から、不妊治療の保険適用範囲が広がり、様々な治療や検査が対象になり経済的な負担も緩和されました。パートナーと一緒に診察・検査を受けることで妊娠の可能性を高くすると考えています。
「妊娠しない」と感じたら、少しでも不安な気持ちを取り除くため、早めの受診をおすすめします。ご不安な気持ちに寄り添いながら「赤ちゃんが欲しい」という気持ちを一緒に大切にしていきます。
・パートナーと受診していただきたい理由
大切な妊娠についてパートナーと一緒に正しい知識を得て考えていただくことを大切にしています。
排卵は1カ月に1回チャンスが来るわけですが、年齢と共に月日の経過が気持ちに負担をかけます。男性側も加齢と共に体力的にも精神的にも連続の性交渉が難しくなり負担になってきます。お二人で受診していただくことで、妊娠しやすい時期を絞り、心と体の負担を減らすケースもあります。今、明確な因果関係は立証されていませんが、不妊とストレスの関係が非常に注目をされています。ストレスから解放されたとたんに妊娠したという話も耳にします。
今、明確な因果関係は立証されていませんが、不妊とストレスの関係が非常に注目をされています。ストレスから解放されたとたんに妊娠したという話も耳にします。
当事者のお二人が一緒になって正しい知識を得て、理解し気持ちを揃えることから得られる効果も大きいと考えています。当院ではプライバシーに配慮しながらお二人と一緒になって不妊への悩みを共有していきたいと思います。
・当院の不妊治療について
当院の不妊治療は、お二人との会話を大切にし、ご状況やご意向、体調面などを考慮した上で、その時に適切な治療を施すようにしております。
当院では対応が難しいと判断した場合は、直ちに不妊専門医へご紹介する体制を整えています。
当院での不妊症検査
【基礎体温測定】
ご自宅で基礎体温を測定していただくことから開始いたします。生理周期の状態の把握や排卵日を予測することができる検査法です。
方法は婦人体温計で毎朝の覚醒時に直ちに舌下で測定します。生理後に約0.3度の体温上昇が認められた最後の低温日を排卵日と定義し、生理開始何日目に体温が上昇するかを測定し排卵日を推定します。
今後の「排卵日の予測」ができれば次回の性交渉のタイミングが図れます。生理開始からの低温期の体温は個人差がありますが、約36.4℃で、排卵後は1~2日で約0.3℃上昇し高温期は約2週間持続して、妊娠が成立しないと体温が下がり生理が来ます。妊娠が成立した場合は高温期が持続します。
欠点は体温にバラツキが生じて排卵日の判断が困難で、実際に排卵していない場合もあり、正確性に欠けることがあります。高温期が10日以下の場合は着床がうまくできず、黄体機能不全としてホルモン補充治療が必要となります。
【経膣超音波検査】
不妊症と関連する疾患の有無や排卵日を診断するために、不妊症治療において簡便ながら最も重要な検査です。まず不妊につながる子宮筋腫や子宮内膜症、子宮内膜ポリープ、子宮奇形などがあるか診断します。
①子宮内膜が8~10㎜肥厚していること
②卵巣内の主席卵胞が18㎜(1日1~2㎜増大)発育していることが確認できれば、排卵日と診断します。排卵日を推定し性交渉のタイミングを指導します。排卵した場合は卵巣から排出し破れた卵胞が認められ、子宮後方、卵巣周辺に腹水を確認します。
また排卵誘発する場合は頻回の検査を行います。不妊症に関わる良性疾患が認められた場合は、外科的切除術やホルモン治療を優先することもあります。子宮内膜が薄い場合、卵胞増大が認められない場合はホルモン治療などを行います。
【血液ホルモン検査】
排卵障害、生理不順や薬の副作用などで生理が来ない方に行います。排卵を障害するホルモン状態であるのかを生理開始5日前後に血液検査で行います。排卵に必要なホルモン(FSH、LH、TSH、PRL)、卵巣から放出する妊娠に必要なエストラジオール(E2)、高温期に妊娠を維持するプロゲステロン(P4)を計測します。
【尿LHテスト】
排卵を予測する尿検査で、原則、早朝に尿で検査します。市販の妊娠検査薬と同様に販売されています。妊娠検査薬と同様の手法で判定します。
【性感染症検査】
クラミジア感染症や淋病の検査を子宮口を綿棒で擦過するPCR検査で行います。クラミジアは骨盤腹膜炎による卵管閉塞症や骨盤内癒着をもたらし不妊症をきたします。他にもクラミジア感染症の血液検査は骨盤内癒着よる不妊症を推定するとも言われています。もし両側卵管閉塞症と診断された場合は体外受精となります。
【精液検査】
男性不妊症の検査です。自宅で専用容器に精液を採取し、2時間以内に持参してください。顕微鏡で1回の精液量、精子数、運動率などを調べます。精子数、精子機能が悪い場合には①人工授精、あるいは当院では実施できませんが②体外受精(顕微授精)などを考慮し不妊専門医へ紹介します。無精子症は泌尿器科と不妊専門医との連携が必要となります。
【フーナーテスト】
精液検査に準ずる検査で性交後検査とも言われるものです。排卵期に性交後約2時間以内に子宮口の粘液を採取し顕微鏡で生体内での精子の状態を検査します。この検査で問題が確認されると人工授精が必要となります。
【通水検査】
生理直後に経膣超音波検査を使用して検査します。子宮内と卵管閉塞狭窄の有無を検査します。子宮口に風船を挿入し固定後に生理食塩水を子宮内に注入します。そして子宮奇形、内膜ポリープ、悪性腫瘍などの異常がないか検査を行います。
次に卵管に問題がないかを調べます。注入中に卵管周辺に痛みを伴う場合は卵管閉塞狭窄症を疑い、卵管閉塞がなければ抵抗なく注入が可能となり、両卵管より腹腔内に流出した生理食塩液が卵巣周辺、子宮後方に貯留する状態を確認します。
また卵管狭窄症が疑われる場合では卵管狭窄を改善する目的で治療もかねて行います。診断困難例はレントゲン下で造影剤を用いて子宮卵管造影検査を行います。(当院では実施してません)両側卵管閉塞症は体外受精の適応です。
【血液AMH(アンチミューラリアンホルモン)測定】
卵巣予備能力(卵子が沢山あるのか)を推定する検査です。月経周期に関わらずいつでも検査できます。卵巣摘出手術を行った方や高齢女性や早発閉経などで卵子数が減少している疑いがある場合などに行うため、体外受精の適応を示す補助的検査とされています。
・妊娠方法
【タイミング療法】
超音波検査、LHテスト、基礎体温測定検査を用いて総合的に排卵日を推定します。一般的には超音波検査で子宮内膜、主席卵胞の大きさを測定して性交のタイミングを指導します。
排卵が無い場合や月経周期が長い場合などは排卵誘発剤を使用します。先ずは内服薬の排卵誘発剤である(クロミフェン:クロミッド)を生理5日目より1日1錠5日間で内服を開始し、排卵を誘発します。クロミフェンの場合は卵胞が直径24㎜程度で排卵すると診断します。過剰反応して多胎妊娠の可能性の高い場合は、排卵誘発を中止します。
タイミング法を確実に行うために、卵胞18㎜が確認された場合に、排卵誘発を促すHCGを投与し、30時間後に性交を指導します。
【人工授精】
夫の精子を濃縮処理して排卵日に子宮内に直接注入します。人工受精はタイミング法や排卵促進剤を使用した上で実施します。対象となるのは、精液検査で異常がある場合、性交渉が困難な場合(男性不妊症)、タイミング法で妊娠困難な例、抗精子抗体陽性者などです。
【不妊専門医をご紹介する場合】
タイミング法と人工授精でも妊娠できない場合、不妊症検査で異常が診られた場合、体外受精胚移植(IVF=ET)などの治療が必要と判断する場合は専門医医療機関へご紹介いたします。
不妊治療は保険適用の範囲が広がり、経済的負担が減ることで、「赤ちゃんがほしい」という想いを叶えやすくなりました。ぜひ「不妊かな?」と思ったら悩む前にお二人でお気軽にご来院ください。不妊専門医との連携も取れていますので、症状やご状況に合わせて最善の方法を選択できるように努めてまいります。
2023.07.03